観光博覧会「牧野博士の新休日」は終了しました。
新キャンペーン「どっぷり高知旅」を開催中です。
第1回 第1回
『高知って、たくさん植物を見られるの!?』
はい、高知県内でイギリスよりも多くの種を見られます!
植物って身近にあるけれど、実はあまり知らないし、専門的なことはちょっと苦手。。。
そんな方のために、高知県立牧野植物園の藤井聖子さんがわかりやすく、
植物にまつわる「へえ、そうなんだ!」を解説します。
イギリスよりも多い!高知の野生植物約2,700種
日本列島には、約7,000種類の野生植物が自生しています。
そのうち、シダ植物以上の高等植物は約5,600種で、約2,700種が高知にあります。
熱帯の国にはかないませんが、先進国、特にヨーロッパ諸国と比較すると大変種類が多いんです。
このことはあまり知られていませんが、とてもスゴイことなんです!
三原村:ヒメノボタンの里
三原村:ヒメノボタン
例えば、日本とほぼ同緯度にあって同じような面積の国や地域で比較すると、北アメリカ北東部では約2,800種、 ニュージーランドは約1,900種、イギリスには約1,600種しかありません。
(イギリスは氷河期に全土が氷河に覆われ、生物の生存が困難だったとされています)。
たくさんの種類の植物が自生するワケは、
高知の特殊な地質や環境にあり
日本の植物相(フロラ:特定の地域に生育する植物の種類)は多様性に富んでいます。
その中でも高知は、さまざまな気候と地形・地質、地理的な条件によって変化に富んだ自然環境に恵まれていて、 より一層、植物が多様化していると思われます。
津野町:四国カルスト
津野町:四国カルスト 天狗高原
高知は黒潮の影響を直接受けるため、国内でも特に温暖で雨が多いのが特徴です。
東西約700kmにおよぶ太平洋に面した長い海岸線があり、北部の四国山地には隆起した1,800mクラスの険しい亜高山帯があります。
仁淀川や四万十川に代表される多くの清流、そして石灰岩地や蛇紋岩地。 これらの地質は乾きやすくて栄養分も少ない“不毛の地”とも言われていますが、実はここでしかお目にかかれない特有の植物が自生しています。
亜熱帯から亜高山帯まで、高知県内にはこうした特殊な地形が点在しているからこそ、さまざま環境が生まれ、多種多様な植物に出合えるのです。
いの町:にこ淵
いの町:にこ淵
春夏秋冬、いつ来ても何かしらの花が咲いています
植物の種類が多いということは、花を咲かせる草花と出合えるチャンスも多いということ。
私は、花を見るならば絶対に高知や!と思っています。1年、12カ月、365日。春夏秋冬、いつ訪れても、何かしらの花が咲いています。
この“開花率の高さ”が、これまた高知のスゴイところ。
一般的に花が少ないと言われる2月でも、牧野博士が幼少のころから愛でた「バイカオウレン」の群生を見ることができます。
佐川町:バイカオウレン
佐川町:バイカオウレン
世界的な植物分類学者を育んだ自然環境を、
今も大切に守り続けていきたい
牧野富太郎博士(以下、牧野博士)は上京して植物の研究を重ね、全国各地を調査や観察会で訪れましたが、 その学びの原点はふるさと高知のとんでもなく豊かな自然でした。
牧野博士は、幼少の頃より野山を駆け巡り、多くの植物を観察・採集して図に描き、わからないことは書籍や人から学ぶという独学の姿勢を貫きました。
故郷の佐川町に近い越知町の横倉山や、足摺岬をはじめとする幡多地域など、県内をくまなく歩いて植物を採集しています。
越知町:横倉山
越知町:横倉山
牧野博士の生まれ持った資質と恵まれた環境、時代の寵児と言えるような研究者として世に出るタイミングの良さとともに、 高知の豊かな自然が世界的な植物分類学者を育んだと言えるでしょう。
そして、高知の自然は今もなお、地域の人々によって大切に守り続けられています。
その一方で、開発や販売目的による乱獲、人と自然の関わり方の変化、猛威をふるう鹿害などで失われている自然もあります。
今回の「らんまん」をきっかけに、多くの方に高知の豊かな自然環境とその現実を知っていただき、保全につながればと願っています。
三原村:ヒメノボタンの里
三原村:ヒメノボタンの里
「らんまん」が、
観光資源としての植物の価値を高めるきっかけに
「らんまん」の放送をきっかけに、ぜひ、県外からも多くの方にお越しいただきたいです。
そして、観光客の皆さんに高知を知っていただくだけではなく、私たち地元としてもあらためて、 高知がすでに持ち合わせている“観光資源としての植物の価値”を見つめ直す機会にしたいです。
その価値が高まり、朝ドラ放送後の“アフターらんまん”も、環境や種の保全への継続的な取り組みにつながることを願い、全力でお手伝いしたいと思っています。

次回
「植物学の研究ってどうして必要なの!?」

◆藤井聖子(ふじい・せいこ)
藤井聖子さん
1980(昭和55)年、大阪府枚方市生まれ。高知在住歴17年。
幼いころから自らの手で栽培するほどの植物好き。東京農業大学農学部農学科を卒業後、神戸大学大学院理学系研究科博士前期課程(理学修士)、 医療系メーカーを経て、2007年より牧野植物園に勤務。
栽培技術課で16年間、50周年記念庭園・土佐の植物生態園・牧野ゆかりの植物などの管理に携わり、 2022年9月から高知県内各地の地域観光を支援するため植物研究課草花活用支援専門員兼教育普及推進課ガイド解説員に。
樹木医、学芸員、自然観察指導員。
【牧野博士のふるさと佐川町】
佐川町1
牧野博士の故郷・佐川町(さかわちょう)では毎年2月ごろ、生家の裏山にある金峰神社の周辺でバイカオウレンを見ることができます。 牧野博士は活動拠点を東京に移した後も度々、この白くてかれんな花を思い出してはふるさとへの思いを募らせたそうです。
また、牧野博士が‘染井吉野’の苗木を東京から送ったことがきっかけで、多くの桜が植えられ、牧野公園の前身が生まれることになりました。
戦争で一度は失われながらも町民の尽力で復活し、牧野公園は高知を代表する桜の名所になっています。
佐川町2 佐川町3
佐川町の人々は今も、植物を愛した牧野博士の思いを受け継いでいます。
地元のボランティアが中心となって数十万株もあるバイカオウレンの群生地・加茂地区の管理と保全に取り組んでおり、そのほかにも、 「佐川さとやま遊友会」によって博士が幼少のころに歩いたとされる道が整備されています。
牧野公園を整備する「牧野公園はなもりC-LOVE」は植物の手入れや増殖、除草活動を毎週実施。
牧野博士の命日にあたる1月18日には毎年、大勢の町民が牧野公園に集い、分骨した博士の墓に手を合わせています。
牧野博士のお墓
地道な取り組みは、やがて地域を越えた交流につながりました。
牧野博士をテーマにした映画制作の企画が持ち上がり、朝ドラの誘致活動に発展。
博士の邸宅跡地に建てられた東京・練馬区立牧野記念庭園の協力も得て全国に広がり、41,000筆もの署名が集まったのです。
そのうちの実に42%が県外の人々から寄せられたもの。環境問題やSDGsへの関心の高まりとともに、 「らんまん」の放送が現実となり、注目を集めています。